Home

会社概要

業務案内

Severability 可分性

2019年4月30日

英文契約を読むと、最後の方にいくつか、日本の契約慣行からみて違和感を覚える条項が並んでいます。英語では “boilerplate clause” と呼ばれるものです。Wikipedia の英語版に簡単な説明があります。

その中の一つは先日、このブログで紹介した “Entire Agreement” 条項です。もう一つ、ほぼ必ず載っているのが “Severability” 条項です。日本語では「可分性」とか「分離可能性」などと訳されます。いずれにしても「?」という感じではないでしょうか。

私の企業法務の経験でも、日本の契約でこの条項が入っているものは一つも見たことはありません。これは要するに「過ぎたるは及ばざるがごとし」という状況を回避するための条項です。

昔の契約にはより弱い立場の当事者(特に消費者契約の消費者)にとって不利な条項が入っていたことは前回も述べました。判例によってそれらは “unconscionable” として否定されました。問題はその否定の方法です。契約条項の中にはまともな条項もあります。そこに免責規定とか、企業は契約をいつでも解除できるが、消費者側は勝手に解除できないとか、とんでもない条項が混ざっている訳です。これを審理する裁判官は、この条項は違法であり無効だ、として契約書から削り取る訳です。その時、その違法な条項だけ削り取ればいいのですが、中には違法な条項の存在そのものを理由として契約書全体を無効とする判例があったらしいのです。「らしい」と書いたのは、私が受けたロースクールの授業で、教授がそう言っていたからで、私自身が資料を調べて確認した訳ではないからです。

となると、違法ではない他の条項まで無効となり場合によっては、強い立場の当事者にとって逆に不利な結果がもたらされます。当の教授は「このような理不尽な契約の場合、裁判官は青い鉛筆(blue pencil)を取り出して、その条項だけではなく、そのページ全部にバッテンしたものです。」と言ってました。本当かな?

いずれにしても、このようなリスクを極力排除するために、無効と判断された条項だけが無効となり、他の条項は影響を受けない、という severability clause が生まれた訳です。

«

»

ページの先頭へ