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契約書締結前に契約書を入念に検討し、専門家のアドバイスを受けました、という表明

2019年5月2日

令和最初の投稿記事です。当社としても新たな時代を迎え、初心に返り、法務翻訳業務に邁進する所存です。よろしくお願いいたします。

さて、消費者目線で英文契約というシリーズですが、今回はこれまた一風変わった条項について簡単に触れます。

英文契約によく、「○○は、本契約を入念に検討し、専門家(弁護士や公認会計士)を起用してその専門的な意見を聞き、この契約の内容とそれに伴うリスクを十分承知して、独自の判断に基づいてこの契約を締結するものである。」という文言が載っていることがあります。ローン契約の「借り手の表明事項」などの条項で見ることがあります。

我々日本人には「何これ?」という条項です。例をあげると次のような内容の条項です。

The Borrower has made an independent investment decision to participate in this Loan based on its own independent review (including as to the financial condition and affairs and its own appraisal of the creditworthiness of the Borrower, the Counterparty and/or any relevant obligor(s) in respect of the Assets) and such professional advice (including, without limitation, tax, accounting, credit, legal and regulatory advice) as it deems appropriate in the circumstances.

Unconscionable contract (非良心的契約)で問題とされる「非良心性」には、「手続的非良心性」と「実体的非良心性」があります。上記の条項は前者に対応するものです。

圧倒的な交渉力を持つ事業者が弱い立場の消費者に対して細かい字で書かれた分厚い契約書を提示して、いますぐこれをサインしないと、このサービス・商品は提供できません、といったケースが想定されてます。このような時に、法的知識もなく、さらにはその契約書の持つ意味を十分理解もしない消費者がサインすることがあります。後日問題が生じた時に、裁判所が契約締結に至る手続が消費者にとって著しく非良心的だと判断すれば、その契約または該当条項が無効とされることがあった訳です。

事業者側がこれに対する防衛として契約書の中に入れてきたのが上記のような条項です。「あなたにはこの契約を我々事業者の圧力を受けることなく、外部の専門家の助言を得て、独自に判断してこの契約を締結するんですよ。いいですね?」という念のため条項とでも言えばいいでしょうか?この条項を入れただけで「非良心性」が消えるかどうかは、その点の含めて裁判所は判断しますので、絶対万能という訳でもありません。しかし “better than nothing” ということなのでしょう。

日本企業が検討する英文契約にもよく入ってますので、その意味を十分噛みしめる必要があります。

 

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