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President の訳は「大統領」でいい?

2014年1月19日

新年明けましておめでとうございます。

 

随分、ブログの更新を怠ってました。

 

前回、日本語にない表現は使わないという方針は、契約書の翻訳に関する限りあまり意味がないのでは、と書きました。

 

契約書などの法務文書は、その背景となる法律や法体系がそもそも異なるので、あまり形式的に単語や表現の一致にこだわっても意味がないのでは、というのが私の率直な感想です。

 

随分昔ですが、日本語の契約書を英訳したときに、「代表取締役」を “representative director” と訳しました。そのときのクライアント(米国系企業)の担当者はアメリカ人でしたが、「representative directorなどという言葉は英語にはない。ちゃんとした英語に直して欲しい」と言われました。

 

そもそも日本法の取締役と、英米法の director は同じものではありません。更に、「代表取締役」にぴったりあてはまる概念は英米法にはないのですから、「正しい英語」に直しようがありません。

 

しかし担当者の主張は「これは誤訳だ。直せ。」というものでとりつくしまもありませんでした。

 

これは President を「大統領」と訳した人に、「日本には大統領という制度はない。ちゃんとした日本語に直して欲しい」というようなものです。

 

(“representative director”は今では法務省が管理する「日本法令外国語訳データベースシステム」で「代表取締役」の英語表現として認知されてますので、上記のような悩みはもうないはずです)

 

結局大事なのは、あるはずもない「正しい日本語(または英語)」を探すのではなく、日本語訳(または英語訳)を読む担当者が、原文に潜む法務リスクをできるだけ正しく理解できるような訳文を用意することだと思います。そのためには何も無理に美しい日本語(または英語)にする必要はありません。みっともなくてもいいのです。ちゃんと理解ができれば。

 

表面上は「美しい日本語(または英語)」でも、そのリスクが伝わらなかったり、ねじ曲げられてしまうものなら、「駄目な翻訳」です。

 

私は勿論、出来る限りちゃんとした翻訳文にするように努力してます。しかし、伝統的な日本語表現(または英語表現)では法務リスクが正しく伝わらない場合は、「非伝統的」な表現を躊躇なく採用します。

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