Home

会社概要

業務案内

複数形の扱い

2014年5月3日

日英・英日翻訳では、数の処理が悩ましいことがあります。

日本語の名詞には英語のような単数形や複数形はありません。これと連動する動詞の変化も日本にはありません。

そこで生ずる問題が、英語の複数形を日本語に訳す場合、数を意識して訳し出すかどうかです。これは特に契約書の場合、ケースバイケースです。

例えば “the Company may disclose the Confidential Information to its employees” などの場合、「従業員」としても、まさか一人とは誰も思わないでしょうから、後日問題となることはないと思います。

しかし、 “The Licensee shall pay to the Licensor the costs and expenses of such audit, including fees of auditors and other professionals incurred by the Licensor.” などの場合は、単に「監査人その他専門家」と訳すと面倒なことになる可能性が出てきます。

後日問題が生じた時に、Licensee 側が「監査人も専門家も一人だと思っていた。二人以上の分は払わない」と主張する可能性が否定できません。

英語では明らかに複数形になってますから、クレームを受けたLicensor はきょとんとするでしょう。そもそも日本語に単数形・複数形の形式的区別がないことなど知らない外国人もいるでしょうから、「ちゃんと複数形で書いてあるのに、何を言い出すのだ」とびっくりするでしょう。

ということは、単純に「監査人その他専門家」と訳すと、翻訳者がリスクを取ることになります。

かなりしっかりした契約書ですと、このような問題を回避するために「複数形は単数形を含み、その逆も同様とする」というような趣旨の解釈条項を入れてます。

それに加えて、翻訳時の解釈のズレがもたらすリスクをなくすためには、「本契約は英語を正文として、翻訳版と英語版との間の齟齬が生じた場合は英語版が優先する」という規定を念のために入れることもあります。こういう条項が入っていると、翻訳者も少しほっとすることでしょう。

«

»

ページの先頭へ