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「瑕疵」が消える?

2017年5月16日

昨日(2017年5月15日)の日経朝刊に民法改正の紹介記事がありました。『検証 民法大改正』というタイトルで、「約款 新たに規定」、「個人保証に歯止め」、「法定利率、変動制に」などのテーマを扱ってます。

今の国会で成立する見通しとなったということで、「とうとう来たか」という気持ちです。

約款に関する規定などはかなり消費者相手の取引に影響を及ぼしそうですが、個人的に「本当にやるのか?」と思ったのは、「瑕疵」という言葉が消えることです。

確かに一般の人にとって「瑕疵」という言葉は、読み方すら分からないでしょう。

『これを「かひ」と読む社員がいる』と、昔勤めていた会社の法務担当者が嘆いていたことを思い出しました。

しかし法務関係者にとってこれほど馴染みのある言葉もありません。対消費者取引はともかく、企業間の取引契約でこの言葉がすぐ消えることはないでしょう。そもそも商人間の取引に適用される商法でも「瑕疵」は使われてますし。

さて改正法では「瑕疵」の代わりに「契約の内容に適合しない」という表現が使われるようです。改正案を見ると、この表現を受けて「不適合」という言葉が多用されています。

法務翻訳者として、これにはちょっとひっかかります。

日本語契約を英訳するときに、これまで「瑕疵」には “defect” をあて、「不適合」には “non-conformity” をあてるのが通常でした。そして少なくとも英文契約では “defect” と “non-conformity” は別物として扱われます。

前者は、納品後の担保期間中に顕在化する瑕疵を意味するのがほとんどです。

他方、後者は瑕疵担保期間というよりは、受入時の外観検査、つまり検品や、工場検査(英語では “shop inspection”)で行われる、仕様その他契約条件との適合性の有無の検証という文脈で語られるのが普通です。

今回民法で「瑕疵」という言葉がなくなり、その後継者のような形で「不適合」という言葉が使われるとなると、企業間契約でも表現面で影響を受けそうです。特に日本語契約を英訳したときに混乱が生ずるのでは、という微かな懸念を感じます。

今後の展開を注視したいと思います。

 

 

 

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