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Kai 7 休憩室・・・誤変換ギャラリー

2013年4月1日

「捺印欄」と打つつもりが「夏淫乱」と出た。

「法治国家」と打つつもりが「放屁国家」と出た。

これまでいろいろとパソコンソフトの誤変換を経験しましたが、この二つは強烈でした。最初のは漢字変換ソフトメーカの初期設定に致命的な誤り、というか傾向があるのではないでしょうか。決して、「学習機能」の効果ではないので、誤解なきように願います。この二つは厳密にいうと、異なる種類のミスです。前者は、キー入力は正しいが変換ソフトに変な癖があった例。後者は単なるミスタッチです。

こういう極端な誤変換は向こうから目に飛び込んでくるので、最終チェックで漏れなくつぶせます。危ないのは、誤変換がそれなりに法務風の単語になる場合です。これまで私が気がつき、日々注意している「誤変換」をご披露しましょう。

専有 vs 占有
この二つはよく似てますが、厳密にいうと違います。「専有」は「専有部分」や「専有面積」等、不動産取引のときによく目にしますね。一人で所有していること、という意味です。英語契約でよく出てくる “proprietary information” には「専有情報」という訳語を当てることがよくあります。これも単独でその情報を所有していることを指します。どちらも所有権があることが前提です。これに対して「占有」とは人が現実に物を支配している事実上の状態です。その人がその物の所有者なのか、単なる賃借人なのか、はたまたそれを道で拾った人なのかは、特に問いません。英語では “possession” がこれにあたります。これ以上の細かい説明はスペースの都合上割愛しますが、ご興味がある方は、いろいろな法律用語辞典で調べて下さい。ちゃんと使い分ければ、クライアントの評価も高くなるでしょう。

失効 vs 執行
この違いは誰にも明らかです。しかしいずれも法務文書に頻出する言葉です。ぱっと書類を見直したときに「放屁国家」のようには目に飛び込んできませんので、うっかり見逃すおそれがあります。
保証 vs 補償
売買契約やライセンス契約などの英文取引契約書であれば、大体、warranty (またはguarantee)という保証条項と、 “indemnity” という補償条項が含まれます。この二つは良く似てますし、また warranty の条項の中に indemnity に相当する内容が含まれることもありますので、とても間違い易いです。なお、“security” に関する条項も盛り込まれている書類もあるでしょう。これは通常「保障」と訳しますので、更に混乱しそうです。warranty と indemnity の違いについては、Kai 17「Kai風手ごねディクショナリー」の中で簡単に触れました。

甲 vs 項
この二つは全く意味も違うので、間違えることはありませんが、日本語契約の中ではとにかく頻繁に顔を出します。「甲」と打つつもりが、その直前に「第○項」と打ったため、学習機能が効いて「項」と変換され、いちいちそれを直さなければならない、ということが頻発し(その逆も!)煩雑です。
役員 vs 約因
英文契約ではほとんど、冒頭にconsideration「約因」という言葉が登場します。従って “officer” という言葉を「役員」と訳すときに、学習機能が効いて勝手に「約因」とされることがあるので、一応目配りが必要です。
翻案 vs 本案
「翻案」は、ソフトウェアの契約でよく見る “adaptation” の訳語です。「本案」は、裁判所の判決でよく見る “merit” の訳語です。この二つが同じ書類に顔を出すことはありませんが、午前中にソフトウェア絡みの書類を翻訳し、午後に裁判所の判決を翻訳するときなどは要注意ですね。
継続 vs 係属
「本秘密保持義務は契約終了後も有効に継続する」等、「継続」は契約書で頻繁に使われます。
一方、紛争条項や特許侵害条項では、裁判の審理が進行中、という意味の pending という英語がよく出てきます。これは「係属中」と訳すことがあり、同じ文書の中で「継続」と「係属」が交互に出てきたりします。この二つは頭では分かっていても間違える、要注意コンビです。
前文 vs 全文
これも英文契約の翻訳でよく見る似たもの同士の衝突です。英文契約では通常、契約の冒頭に、取引の経緯を説明する whereas clause または recital という条項が置かれます。日本語の契約ではほとんど見ませんが。一方、「全文」も「第9条を全文削除する」等、法律や契約書の中でよく出てきます。これも学習機能がおせっかいをして、頭では「前文」と入れたつもりが「全文」となっていることがとても多いです。気をつけましょう。
構成 vs 校正 vs 公正
これもよく間違えます。本当に校正が大事です。
性格 vs 正確
同じ契約書の中で nature と accuracy が使われることはよくあり、これもボーとしていると見逃します。
承認 vs 商人 vs 証人
これはさほど間違えません。「承認」は契約書の常連ですが、「商人」や「証人」はさほどには契約書には出てきません。ただ、いずれもとても法務チックな言葉ですから、気をつけるのに超したことはありません。
検収 vs 研修
プラント建設契約では「検収」(acceptance)は必ず行われますし、検収後の顧客運転員の訓練・「研修」(training)はつきものです。

上のリストとはちょっと毛色が違いますが、キー入力のミスタッチについて、一つだけ注意を喚起します。ミスタッチの場合は、とんでもない言葉が出ることがあり、すぐ気がつくことがほとんどです。但し私の経験で一つだけ怖いミスタッチがあります。それが

行った (okonatta) vs 怠った (okotatta)

です。

よく見て下さい。ミスタッチはたった一箇所。 “n” と “t” の間違いです。しかしその結果は、全くの逆になります。このミスのたちが悪いのは、通常のミスであれば入力時に気がつかなくても、文脈に会わない意味になるので見直した時に大体気づくのですが、「行った」と「怠った」は文脈上はまったくどちらでも意味が通るので、その内容をよく把握してないと、見逃すことがあるのです。とにかくこれは要赤丸チェックです。

といったところですが、お役に立てたでしょうか。他にも恐ろしいミスタッチ、誤変換があるのではと実はおののいてます。もしご存知の「ホラー」ものがあれば、私にも是非教えて下さい。

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