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今日の日経夕刊の記事から

2019年3月26日

今日(平成31年3月26日(火))の日経の夕刊に翻訳絡みで二つ面白い記事がありました。

一つは第一面にある『あすへの話題』というコラム。翻訳家の松岡和子氏が書かれています。

「ジュリエットは中二病」という副題です。その内容はともかく、私が驚いたのは松岡氏が「中二病」という言葉をつい先日知ったという事実です。

私の仕事は法務翻訳がメインですので、いわば堅い仕事です。しかし、例えば契約書を翻訳するにしても、その契約書がゲームソフトのライセンス契約だったりします。つまりsubject matter は結構今日的なものです。それもあって、私は暇さえあればYouTube を漁り、そこにある英語のコメントを読んだりしてます。ここ10年余り、海外の人達の日本に対する関心はアニメやその他オタク関係にかなり寄っていることも肌で感じています。その動きを追って関連記事や動画を見れば、遅かれ早かれ「中二病」という言葉・概念に触れ、「何じゃこりゃ!」と思い調べたりする訳です。

翻訳という作業は異文化交流の一環だと思います。こうやってアンテナを広げるのは、どの分野の翻訳をするにしても必須だと思ってました。松岡氏はシェイクスピアの翻訳など、まさに本格的な翻訳をされてます。年も私と10年以上離れています。時代と世代の違いを大いに感じました。

もう一つは『自動翻訳事業の好調 好感』という標題のもので、企業向け翻訳をされているロゼッタ社の株価が好調という記事です。自動翻訳サービスの精度が上がり、法律事務所や監査法人等に向けた受注が伸びているという内容です。

ロゼッタ社はかってNOVAグループに所属してました。当時は確か「グローヴァ」という社名で、本社は日本橋にあったと記憶してます。その頃から秘かに注目していましたが、大きく伸びたようでなによりです。ただ、法律事務所向けの翻訳がいわゆる法務翻訳だとしたら、かなりのチャレンジだったと思います。

私は今でも契約書、それも巨額の金が絡む融資契約とかプラント建設契約のような複雑な翻訳は、自動翻訳は無理と思ってます。契約書というのは、そこに書かれていることが権利義務を発生させるという、世の中の文書の中で極めて特異な文書です。このような直接的に結果を左右させる「機能」を備える文書は(法律等を除けば)他にソフトウェアのコードくらいしか思いつきません。ちょっとでもミスがあれば、巨額の損失がもたらされる可能性があります。

そもそも原文が間違っている可能性もあります。先日もとある英文契約で “in no event”とすべきところが “in any event” となってました。結果が真逆になります。あまりにも明らかな間違いですので、クライアントにはメモをして指摘させていただきました。

これ以外にも、例えば “if” を “of”とミスタイプしたり、 “i.e.” を “e.g.” と取り違えたりするものもあります。一流のアメリカの法律事務所が作成した契約書ですら、こういう間違いがちらほらあるのです。私は30年以上英文契約を嫌っという程読んでますので、こういう間違いは、ショパンの曲を弾くときの鍵盤のミスタッチのようにすぐ気づきますが、果たして機械翻訳がそのような「感性」を備えているのでしょうか?興味津々です。

では皆さんよい花見をお楽しみ下さい。

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