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太字で大文字の条項

2019年4月29日

前回のブログから少し間が空きました。平成最後の1週間でいろいろばたばたしてます。いよいよ残り後1日です。

消費者目線で英文契約のお話。第一弾です。

皆さんが初めて見る英文契約はなんでしょう?おそらく秘密保持契約あたりでしょうか。重要な契約ではありますが、物やサービスの納入や金銭のやり取りがないので、随分と淡泊な内容です。

その次に扱うのは、ライセンス契約とか売買契約でしょうか。このあたりになると中身が詰まってきます。そして遅かれ早かれ、文字が全部大文字でかつ太字という条項を目にすることになるでしょう。よく読むと、それは大体、保証とか責任限定条項です。更によく読むと、ほとんどの場合、それは、一方の当事者が、自分が売るサービスや商品には「保証」はつきません、とか、この契約に基づく自分の責任はここまでです、というような免責条項です。ライセンス契約の場合はライセンサー、売買契約の場合は売手がこのような免責条項を入れてきます。

かって強い立場の商人が消費者相手の契約で、自分達の責任を放棄または限定する免責条項を細かい字で気づかれないように書くことが頻発しました。当然問題が続出し、とうとう「免責規定は目立たないと無効」という判例が確立したという事情があります。今ではこの原則がUCCにも明記されてます(U.C.C. § 2-316(2))。「目立つ」は原文の英語では “conspicuous” です。

これを受けて、以後、多くの契約書では免責条項を他の条項から目立つように「大文字」そして「太字」で表現してます。今では消費者相手の契約のみならず、企業間の契約でもほとんどこの防衛策を踏襲してます。

かってロースクールの授業で教授が、「契約書を書く弁護士は、なんでもかんでも防衛しようとして、あらゆる条項を太字・大文字にするだろうね。そのうち太字・大文字の条項だらけになり、”conspicuous” じゃなくなるよ。」と皮肉を言ってました。

ところで上で「無効」と書きましたが、厳密にいうと違います。英語では “unenforceable” なので、「強行不能」と書くべきでしょう。しかし日本の法務文書で「強行不能」とか「強制執行不能」という言葉はやや違和感があるので、あえて「無効」としました。「無効」に対応する英語は “void” ですが、”void” と “unenforceable” や “not enforceable” は何が違うのか。機会があれば取り上げたいと思います。

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