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Governing Law と Jurisdiction の違いは?

2020年10月27日

昨日のブログで準拠法(Governing Law)について触れたので、その延長で少し脱線します。その日の気分で書いてますので、あしからず。

私のクライアントは必ずしも企業法務や法律事務所の方ばかりではありません。法律の専門家ではない営業職の方とか、マーケティングの方とかもいます。日本企業で法務部を設けているのはむしろ例外的ですので、こういう方々が契約、それも海外との契約を担当することがあるのです。

よく聞かれるのが、準拠法と裁判管轄の違いです。どちらも随分と難しそうな概念ですので、そもそも理解しようという意欲すら湧かないのかもしれません。今世界はコロナ騒ぎで大変なことになってますが、私も「抗原」と「抗体」の違いは、と聞かれれば、勿論分かりませんし、何かとてつもなく難しそうなので、調べる気力すら生まれません。

準拠法と裁判管轄。英語では Governing Law と Jurisdictionですが、これは全く違うことを言ってますので、混ぜてはいけません。

ほとんどの英文契約では、相手方が例えばアメリカのニューヨークの企業ですと、準拠法はニューヨーク法、裁判管轄はニューヨーク州内の裁判所となってます。

準拠法というのは、契約書の解釈をどこの法律に委ねるかということです。契約がどの時点で成立するか、どういうときに無効になるか、といった問題は多くの場合、各国、各州の法律によって異なりますので、あらかじめ明確にする必要があるのです。

裁判管轄というのは、紛争が生じた場合に、どこの裁判所に提起するかということです。準拠法がX法だから、裁判所はX国(またはX州)のものでなければならない、という原則はありません。なんと言っても契約自由の原則ですので、準拠法は日本法、裁判管轄はニューヨーク州内という合意が、激しい契約交渉の結果、妥協として生まれることはありえます。私がアメリカのロースクールで勉強した時も、そのようなケースの紹介があり、(この例でいえば)ニューヨークの裁判所が、日本法の専門家を雇って契約書を準拠法の日本法で解釈したらどうなるのか、専門家意見を募る、という話を聴きました。その手間を考えて気が遠くなり、法務スタッフとしてそんな紛争には巻き込まれたくない、と思った記憶があります。

ちょっと長くなりました。次回は、これに「法令遵守」(Compliance with Law)条項を加えて、私のとあるクライアントが、その顧客から無理難題をふっかけられたエピソードを紹介します。

しばらく翻訳の話から離れますが。

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