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翻訳ツール

2014年3月21日

当社は一応翻訳会社ですが、一般の翻訳会社とのおつきあいはほとんどありません。翻訳業界の事情にも詳しい訳ではありません。

とはいえ機械翻訳や翻訳ツールの話題はネット上でよく目にします。知り合いの翻訳者の方から話を聞くこともあります。

例えば、翻訳メモリーというものがあります。過去同じような文章を翻訳していれば簡単にその時の訳語が取り出せる、ということのようです。簡単なデモを見たこともあります。

しかし自分で使ったことはありませんし、今後もその予定はありません。

いくつか理由があります。

多分、一番大きい理由は、クライアントから要求されないからでしょう。

当社のクライアントはいわゆるダイレクト・クライアントで、ほとんどが企業の法務部と法律事務所です。つまり翻訳のエンド・ユーザです。クライアントご自身が機械翻訳や翻訳ツールを利用されていないからでしょうか、そもそもそのような依頼を受けたことがありません。

これはクライアント側の事情ですが、私の側でも必要性を感じません。

当社は法務翻訳が専門です。ほとんどの仕事はその都度ユニークなものです。過去作成された文章が大量に混じる文書を翻訳することは稀です。

過去の翻訳例を利用することがあるとしても、ワードであれば、その「文書比較機能」を使い、紙にプリントアウトするか、スクリーン上で目で比較確認する方法で済ませます。

別の事情ですが、ツールを利用するとしても、得られた結果が本当に正しいのか緻密な検証が不可欠でしょう。そんな作業に時間を取られるのなら、初めから直接翻訳した方が確実で効率もよい、と勝手に思ってます。

少し目的が異なりますが、OCRというツールも翻訳業界ではよく使われます。

これは印刷物やファックスなど、文章があくまでも映像情報に過ぎないテキストを光学的に読み取って電子テキスト情報に変換するソフトを組み込んだシステムです。

現在、多くの翻訳者の方々は、ファックスやテキスト化されていないPDFファイルをOCRでテキスト化し、その上で各種翻訳ツールを使って処理してらっしゃるようです。

ただOCRも100%正確に読み取れる訳ではありません。かなり精度は上がってますが、ファックスなどで原稿の細かい漢字が潰れている時は、間違った字に置き換わる可能性は無視できません。

そしてより根本的な問題は、たとえOCRメーカーが、100%正確と謳ったとしても(それは私の経験ではあり得ないと思ってます)、全てのページの検証作業を省くことはできないということです。結果的に100%正確だったとしても、事前に100%自分が納得することはあり得ません。

ということは、もしOCRを使ってファクス文書をワードなどの電子ファイルに置き換えても、自分の目でオリジナルのファックスと、出来上がった電子ファイルのテキストを比較して読み合わせない限り、安心して使うことはできないということです。

他分野の翻訳の事情は知りませんが、契約書など、それ自体が権利関係を左右する文書では、この検証作業は必須です。

そうであれば、最初からファックス原稿を目で読み取って、直接翻訳作業に取りかかる方がよっぽど早くて確実です。

20年近く昔、今の会社を設立した頃は、クライアントから受け取る原稿はほぼ100%ファックスでした。細かい字で書かれた契約書も、膨大な英文のProxy Statement も、目で直接読み取ってました。不思議と読み取りに手こずった記憶はありません。

これは、たとえ字が潰れていても、文脈でどんどん理解できるからでしょう。例えば、「損害賠償」という字の「賠」の字が潰れて読めなくても、前後が読めればこれを他の文言と取り違えることはありません。

しかし、OCRにはそのような文脈解釈能力はありません。「損害賠償」を「損害部償」と読み取ることは十分ある訳です。このような不確かな文章をもとに翻訳作業を行うことは危険です。

というような理由で、翻訳ツールは当面無縁なものと思っています。

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