今朝の日経の記事から
2019年1月14日今朝(2019年1月14日)の日本経済新聞の「法務」面がなかなか興味深かったです。
生憎今日は休日なので、会社でしか日経を読まない方は見逃すかもしれません。
記事は全部で3つに分かれてます。一つは平成を振り返って重要と考えるできごとのアンケート結果。弁護士先生が対象です。もうひとつは「契約書点検にもAI」という今流行のAI物。最後は国際投資仲裁をもっと活用しましょうという弁護士先生の投稿です。それに編集委員の方の「法務進化、次代の課題に」というコメントが添えられてます。
AIの記事では、秘密保持契約所をAIに読み込ませたところ、問題点をずらりと提示したそうです。通常2,3ページほどの秘密保持契約書で問題点が「ずらり」と提示されるのなら、10ページほどのライセンス契約書や30ページ程の建設請負契約書ならそれこそ「どんだけ」提示されるのかと思ってしまいました。その分析にまた時間が取られそうですね。
さて、「次代の課題に」という編集委員の方のコメントでは欧米に比べると日本企業の法務力がまだまだ物足りない、という指摘がされてます。
外資系企業の法務勤務時代、とある日本の大手商社との契約交渉に参加したことがあります。アメリカ人の弁護士A氏に営業も加えて当方は4,5人で出向きましたが、商社側は係長クラスの若い方一人でびっくりしました。とても専門的な話はできず、商社側は「我が社の定形書式の変更は一切認めない」の一点張りでした。秘密保持規定が数行の本当に簡単なものだったので、A氏は一般的な例外規定(公知公用は除く等の、いたって普通の規定です)の追加を求めたのですが、全く聞いてもらえませんでした。もっと複雑で巨額な契約の時も、こんな体制で契約交渉に挑むのかなと、日本人である私ですら首を傾げざるを得ませんでした。
少なくとも米国企業では、金額の多寡を問わず、契約の専門家が出席しない契約交渉はありません。営業マネジャーであれ技術マネジャーであれ、契約担当がいなければ契約交渉は進めません。そこは徹底してます。
これを裏付けるために、それなりの人数の法務担当者が雇われています。ほぼ全員、弁護士です。私が勤めた会社は、いわゆる全社的な法務案件を扱うCorporate Law Department というのが本社にあり、その支部はアメリカ国内はもとより、主要各国に置かれてました。これはCEO直属のいわゆる法務部です。トップはGeneral Counsel と呼ばれ、Officer です。
これとは別に、事業部にはContract Administrator が配置されていて、契約交渉は基本的に彼らが行います。こちらは事業部長直属です。こちらも多くは正式な弁護士です。
通常の契約交渉はこれら事業部直属の法務担当者がリードして行います。大きな法律問題が絡む時は、Corporate Law Departmentの弁護士が顔を出すこともありますが。
これに、社内のパラリーガルや秘書などのサポートスタッフ、更には外部の法律事務所が加わります。この日米での人的インフラの厚みの違いは当時、歴然としてました。私が企業法務を離れた後、日本でも司法試験の合格者数が増やされましたが、まだまだ差があるようですね。