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Jurisdiction について – One more thing

2020年11月15日

今回のシリーズは先月発売されたビジネス法務2020年12月号に寄稿した論考を補足することが目的でした。つまりテーマは本来法務翻訳、つまり翻訳技術のはずなのですが、ちょっと脱線気味ですね。ただ、法務翻訳でとりわけ大事なのは、翻訳対象の内容についての深い理解ですので、しばらくこのまま行きましょう。

さて Jurisdiction についてもうひとつ。

「裁判管轄」の意味の Jurisdiction条項ですが、これと似ているものに Arbitration 条項というのがあります。英文契約を頻繁に扱っている方であれば時々遭遇されることでしょう。これは通常「仲裁条項」と訳されますが、覚えておいていいポイントは、もし英文契約書に Arbitration 条項があれば、その契約書には Jurisdiction 条項はないということです。逆に、もし Jurisdiction 条項があれば、 Arbitration 条項はありません。この2つの条項が同じ契約書の中に共存することはないのです。

ただし、Arbitration 条項がある契約書の中で “jurisdiction” という言葉が出てくることはあります。その場合は、「裁判管轄」ではなく「法域」という意味で用いられているはずです。もしそのような事態に遭遇されたら確認してみてください。

少し補足します。英文契約書の中で “Arbitration 条項” がある場合、それはほぼ、”final and binding arbitration” 、つまり「最終的かつ拘束力のある仲裁」です。その一番の目的は、Jurisdiction 、つまり裁判所での訴訟を排除することです。ですからこの2つが共存することは本来ないのです。

しかし、arbitration (仲裁)には「拘束力を持たない」ものもあります。この場合は、とりあえず仲裁はするが、それで解決しなければ最終的には裁判所での訴訟に持ち込むことになります。ということでこの場合は「共存」はありえます。ただ私の40年以上の法務経験の中で拘束力を持たない仲裁条項を見たことはほとんどありません。やはり拘束力のある仲裁か、裁判所での訴訟か。この2つに一つと言えるでしょう。

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