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新年のご挨拶

2024年1月10日

遅ればせながら明けましておめでとうございます。

2022年、2024年と激動の年が続きました。翻訳業界も激動の2年だったと思います。

数年前からDeepLなどの翻訳ソフトの質が劇的に向上し、ざっくりとした翻訳に使えるようになりました。

2022年の11月にはChatGPTが公開され世界を驚愕させました。マルチな性能を発揮するChatGPTですが、その翻訳性能も驚くほどのものです。

私も早速、和訳、英訳とも試してみました。おおまかな情報収集を目的とする翻訳なら誤差も許容範囲内にあり、実用に耐えると思います。

しかし普通の翻訳には使えても契約書などの法務翻訳はまだ難しいというのが率直な印象です。

例えば「代表権を有する取締役および監査役」という文章を考えてみます。

他に手がかりなく、これだけで訳せ、と言われたら、深く考えることなく “directors and auditors with representative authority” と訳しそうです。

しかし日本の会社法では監査役が代表権を持つことなないので、正しくは “directors with representative authority and auditors” とすべきです。

試しにChatGPTにかけてみました。以下が結果です。何度か指示を重ねてみました。

************************

User

英訳せよ。代表権を有する取締役および監査役

ChatGPT

“The director with authority and the auditor with authority.”

User

もう少し簡潔に。

ChatGPT

“The authorized director and auditor.”

User

代表権は representative power としてください。

ChatGPT

“The director with representative authority and the auditor.”

User

複数形にして

ChatGPT

“The directors with representative authority and the auditors.”

************************

なかなか興味深いですね。最後はそれなりに正解に近づいてますし。

とは言え、一定の指導が必要なのが垣間見えます。

ただ、法務翻訳の場でも、少なくとも力仕事は十分任せられる気がします。例えば契約書の翻訳で多くの国名をぞろぞろと並べることがありますが(EU加盟国の列挙とか)、その正式英文国名が瞬時に正しく変換されるのには感動します。

畑は違いますが、医療・化学関係の翻訳の場合、羅列される物質の化学名も一発で英語名に変換できるでしょう。

試しに「4,4′-(2,2,2-トリクロロエタン-1,1-ジイル)ビス(クロロベンゼン)」をChatGPTにかけたところ、少し考え込んでましたが、正しく“4,4′-(2,2,2-Trichloroethane-1,1-diyl)bis(chlorobenzene)” と出ました。

キーボード入力作業の軽減だけでもありがたく、翻訳作業への貢献度は計り知れないものがありそうです。

逆に懸念すべきは、自分のデータが取られるということです。ChatGPTに入力したメッセージは、学習データとして使用されたり、将来的にChatGPTの回答に反映されたりする可能性があります。従い、機密性の高い法務翻訳では無邪気に利用することは避ける必要があります。

さて人工知能はいずれ汎用人工知能に到達することが確実視されています。そうなれば日本法で監査役には代表権がないこともシステム側にとって折り込み済となり、ほぼ完璧な翻訳が可能となる気がします。

そうなれば翻訳業界は宗旨変えを余儀なくされるかもしれません。

そのような将来の環境激変の可能性を念頭に置きながら今年も真摯に法務翻訳に励む所存です。

引き続きよろしくお願いいたします。

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