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『007 スペクター』の予告編を見て … 続き

2015年12月7日

映画の字幕翻訳はともかく、契約書などの法務文書の翻訳では一番大事なのは、「正確な翻訳」でしょう。

とはいえ読み手がつまずく表現はできるだけ避けます。法務リスクが文章の流れに沿って効率よく頭に入るのがベストです。

英語の契約書の文章は、必然的に普通の英語に較べて文章が長くなったり、構造が複雑になります。そのため、英語をそのまま「正確」に日本語に訳すと読み手が途中でつまずいたり迷ったりすることがあります。

いろんなパターンがあります。一例を挙げましょう。

“consequential, incidental, indirect and punitive damages” という表現は契約書の免責条項でお馴染みです。

これは文法的にいうと、形容詞が四つ並び、最後にそれらの修飾対象となる名詞が置かれます。文法に忠実に訳せば「派生的、付随的、間接的、および懲罰的損害」となるでしょう。実際、多くの和文契約ではそうなっています。

最近、長いのを見ました。

“direct, indirect, special, general, punitive, exemplary, aggravated, incidental or consequential damages”

これを訳すと、こうなるのでしょうか?

「直接的、間接的、特別的、一般的、懲罰的、加重的、付随的または派生的損害」

しかし、一般的な日本の契約では、このような形容詞の羅列を見ることはまずありません。最近は、英文契約の翻訳ではなくて初めから日本語で作られた契約でも、「派生的損害」や「付随的損害」は散見されるものの、日本語で「○○的、△△的」というように形容詞を羅列しすぎると、あまりにも形容詞の数が多く最後の名詞がなかなか出てこないので、結構なストレスを感じます。

こんな場合には「派生的損害、付随的損害、間接損害および懲罰的損害」というように「損害」を一つ一つの形容詞の後につけて、名詞の羅列に置き換えてしまうと、少しすっきりしますね。

形容詞を羅列する場合、「派生的、付随的」と来れば、 “indirect” も「間接的」としないと平仄が取れません。これも悩みの種です。

おまけに、日本法で「間接損害」は普通ですが、「間接的損害」とう言葉はあまり目にしない気がします。これもそれぞれを名詞にまとめてしまえば、「間接損害」となり「的」は不要になります。

ところでこの形容詞の羅列は、英文契約ではよくあることですが、日本語の契約では馴染みがありません。読み手が戸惑わないように翻訳に工夫するのに結構骨が折れます。

先日、こんな文例をネットで見つけました。

“Objectionable Content includes, but is not limited to: (i) sexually explicit materials; (ii) obscene, defamatory, libelous, slanderous, violent and/or unlawful content or profanity”

(ii) の中の “obscene” は普通は「猥褻な」と訳しますし、 “violent” は「暴力的」と訳すしかないでしょう。

このように日本語の形容詞は末尾が「な」だったり「的」だったりしてまちまちです。従って、単純に形容詞だけをぞろぞろ並べると、統一感が出ません。どうしたらいいでしょうかね。

 

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