ミスタッチとEU離脱
2016年6月26日以前、「誤変換」について記事を書きました。こちらです。https://kaicorp.com/blog/48.html
最近「やばいな」と思いはじめているのは、誤変換というよりはミスタッチというべきものです。
具体的には「協業」と「競合」です。
誤変換のギャラリーには、「占有」と「専有」、「保証」と「補償」、「継続」と「係属」などを挙げました。これらは確かに間違えると恥ずかしいことになります。しかしどうでしょう。致命的とまでは言えないかもしれません。
しかし「協業」と「競合」は正反対の言葉ですので、見過ごしてクライアントに提出してしまうと取り返しがつきません。
今日の仕事でもこのミスタッチをして「まずい!」と思いましたので、注意喚起のためにここにメモしておきます。
どうやら、最近、このブログも「注意喚起」ブログになってきました。
英国のEU離脱は早速大きな波紋を起こしています。津波と言ってもいいくらいの衝撃ですね。
その政治的、経済的な問題については、専門家でもないので触れません。
ただ、これが欧州の法務分野の翻訳に及ぼす影響については興味津々です。
ご存知かもしれませんが、EUの公的文書は加盟各国の言語で作成されます。法律、判決、指令などなど全てです。
このため膨大な翻訳作業が生じますが、これを支えている巨大な翻訳者集団が存在します。それを束ねている方の講演会が2013年名古屋大学で行われ、私も参加しました。
こちらにその時の案内があります。
http://jalii.law.nagoya-u.ac.jp/project/jasymposium2013
法律、判例などは各国の母国語に「翻訳」されますが、それはいずれも翻訳ではなく「正文」となります。従ってとにかく正確で迅速な翻訳が必要な訳で、その仕組みを聞いているだけで圧倒されました。
加盟国が増えれば、それに合わせて翻訳スタッフを拡充せねばならず、本当にこんなことが可能なのかと素朴な疑問を感じたものです。というのも、ドイツやフランスなどの大国は別にして、ラトビアやスロベニアなどの小国の場合、そんなに人材がいるのかと思わざるを得ないからです。
今回の英国の離脱ですが、となると英語はどうなるのか、という別の素朴な疑問が生じます。
これまでのEU関連の法律などは、英語版があったからこそ、日本など外国でも多くの研究者がフォローできたと思います。もし英語がなくなれば、ドイツ語やフランス語などでフォローするしかなくなるのでしょうか?
まだアイルランドが残っているので英語も残るのかもしれません。しかしアイルランド語そのものがEUの公用語になっているので、英語を落とす可能性もありますね。もし英語を残すとしても、英国人のスタッフがごっそり翻訳チームから抜けるのでしょうか?
この翻訳という狭い分野ですら、このような問題が生ずる訳です。
歴史的な大事件であることは間違いありません。