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Compliance with Laws 条項の意義 - その2

2020年10月31日

Compliance with Laws 条項にはもうひとつ意義というか、大事な働きがあります。

例えば日本国内の事業者は、日本法は勿論遵守義務を負いますが、外国の法律とは基本的に無縁です。例えば米国法を守って欲しいと期待することはできません。場合によっては日本の法律と米国法が矛盾することもありますから、これは当然です。

しかし日本企業と契約をする米国企業がそれでも日本企業に自国の法律を遵守するよう求めることがあります。取引の国際化が進んだ現在では、むしろこちらの方が普通になりつつあります。その対象となる法律はいくつかあります。一番目立つのはやはり輸出管理関連の法規です。特に米国は自国技術が特定の国や国民に流れることを嫌い、国内法で自国の企業に対して制限を課してますが、その際、他国にいる米国企業の取引先も同じ制限を受けることを求めています。従い、当該米国企業はこの遵守義務を契約書の中に入れ、契約義務として日本企業に守ってもらう必要がある訳です。

この条項が契約書に入り始めた当初のころは、日本企業の多くは、「どうして米国法を我々が守らねばならないのだ」という抵抗を示したものでした。しかし最近はかなり受け入れているようです。というもの、逆の事情もあり、日本企業としても海外企業に日本の輸出管理法を守ってもらう必要が増えているからでしょう。

この条項の対象となる法律で大事なものがもうひとつあります。それは米国の「連邦海外腐敗行為防止法」です。英語ではForeign Corrupt Practices Actといい、FCPAと略されます。これは海外で事業を行う米国企業に対して、贈賄などの違法行為を禁止する法律で、これに違反した米国企業(または行為者)は、たとえその「犯罪」が海外で行われても、米国内で罰せられます。米国企業としては当然このリスクをカバーするため、日本企業に対してこの法律を守る様に要求する必要があり、その手段として取引契約書が用いられます。

ここ数日、翻訳のテーマから離れて英文契約書の中身の説明をしてますが、やはり法務翻訳は文書の法的な意味やリスクを把握するのが一番大事ですので、しばらくこの方針でやってみるつもりです。

 

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