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Compliance with Law を利用した屁理屈 - 続き

2020年11月5日

昨日のブログの続きです。

A氏が直面したX社担当者のロジック。どう反論すればいいでしょう?

法務に携わっている方であれば、このロジックがひねくれていることはすぐ分かると思います。しかし多くの企業では、法律知識が不十分か、法務経験がない方が契約書の処理を担当されています。そのような方々はこのロジックに少したじろぐのではないでしょうか?

結論から言うと、このX社の担当者は、法務知識がないか、または法務知識はあるが相手先に法務知識がないと見てわざと屁理屈をこねくり回して交渉を有利に運ぼうとしているか、どちらかでしょう。

どちらも正しい対応とは言えません。

まず、法令遵守条項があるから、当事者は準拠法(この場合は日本法)をそのまま守らなければならない、というのが乱暴な議論です。

法律にはいろいろなものがあり、その分け方も様々ですが、一つの分け方は「強行規定」と「任意規定」です。

強行規定は、当事者が異なる合意をしてもそれを覆して強制的に適用される法規です。例えば、制限速度が40キロの場合、たとえ荷主と運送業者が「60キロでもOK」ということで合意しても、それが許されるものではありません。

これに反し、任意規定は、法律にある規定があっても、当事者がそれと異なる合意をすればそちらが優先されるという規定です。例えば民法には契約自由の原則があり、民法の多くの規定は契約当事者が異なる合意をすることが可能です。例をあげると、民法では売主が商品の契約不適合について責任を負うと規定されてますが、当事者同士の合意で、売主は一切責任を負わないと定めるができます。つまり保証は一切しないとうことで、不動産取引でよくみられる「現状有姿」条件が典型的な例です。

つまり準拠法が日本法でも、そして契約書に「法令遵守規定」があったとしても、当事者間で任意規定について異なる定めをすることは可能なのです。それは「法令遵守規定」には何ら反するものではありません。ですから取引基本契約に売主は「製造物責任」を負うべしという規定があったとしても、それに対して「責任は負わない」、または「責任は負うが、限定したい」と申し出ることは可能ですし、そのような合意をすることも可能なのです。

実際、ネットで世界的な企業の利用規約を見ると、そのような責任排除、または責任限定をした条件が多く見られます。

ということでX社担当者のロジックは通用しない。ただのこけおどし、ということになります。

 

 

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