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「法務翻訳もAI によって置き換えられると思いますか?」とChatGPTに聞いてみました。

2024年1月20日

今日は土曜日です。

ふと思いついて、「法務翻訳もAI によって置き換えられると思いますか?」とChatGPTに聞いてみました。ChatGPTの答えと私の感想というかコメントを以下に記します。ご参考にしてください。

[ChatGPTの答え]法務翻訳は高度な専門知識や精緻な文書解釈が求められるため、完全に人間の翻訳者によるものが置き換えられる可能性は低いと考えられます。以下はその理由です。

[私のコメント]2年前であれば私も同じ答えだったと思います。

しかしここ2年のAI翻訳の急激な性能向上と、近い将来実現すると思われる汎用人工知能(Artificial General Intelligence)の想定能力を考えると、あと2,3年はともかく、5年くらいすればAI翻訳も「高度な専門知識や精緻な文書解釈」を備えると思います。

特に高度な専門知識ですが、弁護士ですらその知識には限度があります。だからこそアメリカでは法廷弁護士が裁判所に向かうときは、自分たちの主張を覆えすような判決が前日までにどこかの裁判所で出ていないか、確認する地道な作業を強いられます。(この作業は shepardize と呼ばれ、Shepard’s Citations がその由来です。)

しかし汎用人工知能ともなれば過去の全ての判例を検索するのは朝飯前となり、このような作業ですら数分で片付くでしょう。

そのような段階に達したら「人間には高度な専門知識があるから」などとは到底言えないと思います。

文書解釈も、例えば契約書の場合であれば、過去の膨大な英語原文と対応する日本語訳がデータに蓄積され、それを基にあらゆる文書解釈をこなし、最適な訳文を安々と提示してくるような気がします。

[ChatGPTの答え]専門知識の必要性: 法律文書は専門的かつ複雑な内容が含まれています。法的用語や文法の微妙なニュアンスを正確に理解し、翻訳する必要があります。これは人間の専門家によるものが不可欠です。

[私のコメント]上記の通り、「人間の専門家によるものが不可欠」という時代は終わる気がします。

[ChatGPTの答え]文脈の理解: 法律文書は文脈によって意味が大きく変わることがあります。特に契約書や法的文書では、文脈を正確に理解し、適切な翻訳を行う必要があります。

[私のコメント]これは本当にそうで、文脈を正しく理解しないと危ない翻訳しか出てきません。私も過去、そのようなお手上げ翻訳を嫌というほど目にしました。ただ、この文脈の理解こそAI翻訳が一番得意とする分野では、と私は怪しんでいます。少なくとも法務の専門家ではない翻訳者の法務翻訳と比べれば、すでに同等またはそれ以上の文脈理解をこなしている気がします。

[ChatGPTの答え]法的制度の違い: 異なる国の法的制度や慣習が異なるため、それらを正確に反映するためには地域の法律に通じた翻訳者が必要です。

[私のコメント]汎用人工知能ともなればそれこそ世界各国の法律と法的制度も完全に把握し、かつ real time でupdate すらこなすでしょう。翻訳対象の文書がどの国を扱っているのかを瞬時に理解し、正しい訳文(そして場合によっては親切なコメント)を生成してくれるのではないでしょうか?これは流石に5年くらいのスパンでは難しいかもしれませんが、10年後は分かりませんね。

[ChatGPTの答え]機密性と信頼性: 法的文書は機密性が高く、誤訳や不正確な翻訳が許されない場合があります。人間の翻訳者が情報の機密性と信頼性を保つために不可欠です。

[私のコメント]これには現時点で反論できます。

人間による翻訳は必ずしも機密性が担保されてません。

現在多くの翻訳は翻訳会社がフリーランスの翻訳者を起用して生産されてます。翻訳会社自身はもちろんクライアントと秘密保持契約を結んでいるでしょうが、実際に誰が翻訳しているのかがクライアントに開示されることはありません。つまりクライアントとしては自分たちの書類が最後誰に渡っているかを知る術がないのです。

加えて日本の場合、そのフリーランスの翻訳者が法定守秘義務を負っている弁護士その他士業の人という可能性はほぼゼロです。(アメリカではワークライフバランスを優先して弁護士の仕事を離れて法務翻訳に専念している弁護士(特に女性)はかなりいるようです)

私は1997年に株式会社で起業して以来、基本的に一人で翻訳作業をしています。クライアントとはもちろん秘密保持契約を結んでいますが、加えて米国弁護士として法定の秘密保持義務も負ってます。

これを評価して機密性の高い翻訳を依頼されてきたクライアントもおられます。米国弁護士である証拠の提示を求められたこともあります。

日本でも弁護士はもちろんのこと、司法書士、行政書士などの士業の方々は法定の守秘義務を負ってます。これに違反すれば刑罰のみならず、弁護士会などの組織から追放される恐れすらあります。

しかし翻訳業には法定資格はありません。なので世の中の大半の翻訳を引き受けている一般の翻訳者は、法定の守秘義務は負ってません。(これに対し、通訳ガイドの場合、通訳案内士法に基づき法定の守秘義務を負っているのが興味深いです(同法第14条))

勿論、直接の取引先である翻訳会社と秘密保持契約は交わしていると思いますが、それがどれほど担保されているか正直疑問です。

その点、AI翻訳であれば生身の人間が絡みませんので、秘密情報流出のリスクはかなり抑えられると思います。ただし、1月10日のブログで述べた様に、運営会社の利用規約に基づきデータが他の目的に流用される可能性はありますので、これは考慮する必要があると思います。

[ChatGPTの答え]ただし、AI技術は法務翻訳のプロセスを効率化し、翻訳者をサポートするツールとして利用されています。機械翻訳やCATツールなどを活用し、翻訳者が作業を迅速かつ正確に行うための手段として導入されています。将来的には、人間と技術の連携が進むことで、より効率的な法務翻訳が実現される可能性があります。

[私のコメント]これは現時点では正しいでしょう。多くの翻訳会社や翻訳者、更には企業法務や法律事務所も今やAI技術の活用が業務効率向上にとって必須ででしょう。そして上記の理由であと数年もすれば、AI翻訳が翻訳の主役となり、人間がサポートに回る時代が来るでしょう。

[最後に]このChatGPTの答えは変に控えめで、当たり障りのないもの、という印象を受けます。私のコメントのような答えが最初からドンと出てきてもいいのではと思うのですが。あまり人間様を刺激しない様、敢えて自重している気がしてなりません。だとすると、それ自体、ChatGPTの恐るべき能力と言えませんか?

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